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2013年12月29日の説教概要 [説教要旨]

降誕節第1主日礼拝  2013.12.29
説教:「箱を開けて」 望月修治
聖書:マタイによる福音書2章1~12節

◆ マタイ福音書は東の国から長い旅をしてユダヤにやってきた占星術の学者たちの物語を通して、クリスマスの意味を語っています。古代世界の占星術は定位置あると見える北極星を中心に成り立っていました。星は規則正しく動き、人間の運命を示す。それが占星術の常識でした。ところが星が動き出したのだとマタイは物語ります。9節です。「彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった」。当時の世界観では動かないはずの星が動いた。それは自分たちの人生は星によって定められた運命通りに刻まれていくのではなく、星を動かす方がおられ、自分たちにその意志を示し働きかけることを示しています。学者たちはその事実を発見し、気づかされ、旅立たざるを得なかったのです。

◆「東の方からエルサレムに来て」とマタイは記しています。「東の方」とはおそらくペルシアのあたりを指しています。ペルシアからユダヤまでの距離は二千キロを超えます。砂漠や荒れ野を越えなければなりません。野獣や盗賊に襲われ、命を落とす危険もありました。そのような旅を重ねてエルサレムに来たのだということをマタイは「東の方からエルサレムに来て」という言葉に込めたのだと思います。先週のクリスマス礼拝で、ルカによる福音書が記す羊飼いたちは「あなたがたのために救い主がお生まれになった」という天の使いの言葉を本気で聞いた。それが本当であると信じ、「さあベツレヘムに行こう」と応答し、現場へ急ぎ向かった。無防備な存在でしかない乳飲み子が、神のこの世に示す救いの働きのしるしなのだということを、本気で聞き、信じ、応答したのだとお話しました。占星術の学者たちも同じです。彼らは星を動かす方がおられる、そのことを示す現実に向き合わされたとき、その方を信頼して、彼らは旅に出たのです。彼らはもはや占星術師ではいられなかったからです。星によって定められた人生を歩む、そのような世界観の中に留まっていることはできなくなったのです。当時のオリエント世界でペルシアは先進国です。その国から、世界の周辺と見なされていたユダヤに王が生まれたというので拝みに来たというのです。これは占星術の学者たちに起こった方向転換、それまでの生き方、世界観を捨てて、新しい生き方をはじめたことを示します。

◆ 彼らは、星を動かす方がいるという現実を前にして、傍観者でいることはできませんでした。それが11節に記されている学者たちが行ったことの意味です。「家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた」。幼子の前で宝の箱を開けて、大切なものを献げ、礼拝したということの意味は、そういうことです。

◆ クリスマスの救いの物語は、傍観者がそれを見て感激できるような出来事ではありません。救いは経験されなければなりません。占星術の学者たちはそのために旅立ったのです。二千キロを超える旅、それは危険な旅です。決して楽な、また短期間の、日常の疲れを癒すような旅ではありません。占星術の学者たちは危険を承知で、クリスマスの出来事に参与するために旅に出ました。

◆ 占星術の学者たちは救い主の誕生を祝ったあと、自分の国へ、自分の生活の場へと帰って行きます。救い主に出会ったら、そのあとには楽園が用意されているのだろうか。そうではありません。学者たちは「帰って行った」のです。自分たちが今まで生きて来た場所に帰るのです。ただし来た時とは「別の道」を通って自分たちの国に帰って行きました。自分たちの国に帰って彼らを待っているのは、旅に出るまでと同じ世界です。しかしそれを受けとめる見方、視点を変えられて彼らはそこに帰って行くのです。それが「救い」です。救われるというのは、生きることへの視点を新たにされて、自分が生活している場所、生きている場所にもう一度立ち直すことです。帰って行くことです。それが救い主と呼ばれたイエスが人々に、そして今を生きる私たちに語り続けている「救われる」ということの意味です。視点を新しくして、視点を変えられて、今生きている場で生き直す、そのことの促しをこのクリスマスの物語は東の国からやってきた占星術の学者たちの姿を通して私たちに語りかけています。

2014年1月12日の主日礼拝 [主日礼拝のご案内]

2014年1月12日(日)午前10時30分
降誕節第3主日
説 教:「鳩のように」  牧師 望月修治
聖 書:マルコによる福音書1章9-11節 (新約p.61)
招 詞:出エジプト記14章15-16節
讃美歌:27、127、68、280、91(1番)
交読詩編:36;6-10(p.39上段)

※礼拝は、同志社女子大学栄光館ファウラーチャペルにて行われます。また、礼拝後おしるこ会も行われますのでどなたでもお越し下さい。

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